新・生き方辞典特別編
『サラリーマン最後の日』
file005 中山 弘さん 1946年生まれ [自動車業界]
Q サラリーマン時代の仕事は?
エンジニアとして、本田技術研究所に29歳で中途入社しました。「車全体の企画をしたい」という入社以来の希望が叶い、45歳の時に商品企画部門に移ります。当時のホンダはプレリュードやNSXなどのスポーツタイプが主流でした。時代のニーズは変化していると感じていたので、箱型の「ステップワゴン」を企画提案し、4度目でやっと採用されます。今ではホンダの主流はファミリーカーになりました。
1997年に、「ホンダ2010年ビジョン」づくりに携わり、21世紀に向けた経営戦略を考えました。その後、TQM(総合的品質管理)を推進する役割となり、世界各地の車の生産、販売、開発の現場を回って、PDCAを回すサポートをしました。
Q 「サラリーマン最後の日」はどんなことを考えていましたか?
最後の職場は本田宗一郎が創設したホンダ学園という専門学校でした。埼玉と大阪に二つの学校があり、1,500人ほどの学生が居ました。若い人たちとともに過ごすのは楽しく、本来の管理業務の他に授業を受け持ったり、バイクのエンジンを使ってフォーミュラカーをつくるクラブを創ったりしました。自動車研究開発の学科や海外インターシップのコースを立ち上げたので、退職時にこれらの新たな取り組みが継承していくといいなと思っていました。サラリーマン最後の日に、生徒と先生から寄せ書き、法人本部のみなさんから本音の詰まった感謝状をいただきましたが、今も大切に持っています。
「教育は未来を作る仕事」なので、未来をどう予測し、そこでどういう資質や能力必要とされるか。そのためにどういう教育をやるか。ということを考えるために、ホンダ学園での教育のあり方を考える「2030年ビジョン」を作りました。考えれば考えるほど、日本の未来が危ないと感じるようになりました。若い世代に責任ある未来を残すため、退職後は、民間の草の根活動で「2030年ビジョン」を作ろうと考えていました。
Q 現在の「しごと」は?
2008年から、長期ビジョンを持ちながら、みんなでつながって行動することでHappyで希望が持てる未来の実現を目指す「“2030ビジョン”プロジェクト」の代表をしています。食、エネルギー、きょういく、子育て、はたらく、健康、コミュニティなどの様々なテーマの検討会を開催しながら、目指したい未来像を考えています。
最近は、「きょういくの未来」を考える活動を進めていますが、本田技研の企画の仕事、ホンダ学園の教育、さらに、退職後の様々なつながりのネットワークが生きていると感じています。まさに、「人生無駄無し」です。2030年までの残り10年。そろそろ本腰を入れて取り組む必要があると考えています。
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インタビュー:上木宇宙