新・生き方辞典 特別編
『サラリーマン最後の日』
file002 新井幸一さん 1959年生まれ [印刷業界]
Q サラリーマン時代の仕事は?
大手印刷会社の技術開発部門で30年間、印刷工程を合理化するためのロボット、省力機器、 検査器を開発する仕事をしていました。開発した機器は社内だけでなく全国の印刷会社、 金融機関等に販売し、設計、プログラミング、設置からフォローまで担当していました。 FA(ファクトリーオートメーション)の技術は日進月歩で、ものづくりが楽しくお客様に喜ばれることをやりがいと感じ、管理職の道は目指さずに一技術者として最後まで現場を貫きました。
Q 「サラリーマン最後の日」どんなことを考えていましたか?
2011年、52歳の時に会社から45歳以上の社員を対象に300人の希望退職の募集がありました。
退職の日まで休むことなくいつも通りに仕事をやりきり、きちんと挨拶もすませました。最後の日、個別面談で退職の説明をされた直属の部長に付き添われタイムカードを押した時には 不思議と晴れ晴れとした気持ちでした。東日本の震災の直後だっただけに、現状を認めなければという緊張感と再スタートへの覚悟があったように思います。
Q 現在の「しごと」は?
さいたま市南区鹿手袋にある「ヘルシーカフェのら」で調理人として一日5時間、週4日働いて います。 退職してすぐに料理教室に通い始めたことや専業主夫として毎日夕食を作っていたことで、 自宅の近所にある行きつけのカフェで人手が足りないということから調理を手伝うようになりました。 4年後には調理師の免許を取得しました。
今後もできれば80歳位まで調理人として腕を磨き、 若い世代の人たちから必要とされるような職人として働き続けたいと思っています。 また退職後に取得したファイナンシャルプランナーの資格を活かして店内でセミナーを開いたり、個人のお客様の相談にも応じています。
インタビュー:上木宇宙