誰もが長生きする社会。シニアとこれからシニアになる人たちと「長生きするのも悪くない」と思える仕組みをつくっていきます。

 

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ものづくりとITスキルを活かせる場 

カマクラビットラボ(神奈川県鎌倉市)

 

2020年から小学校でプログラミング教育が全面実施となることから「プログラミング」という言葉を聞く機会が増えました。鎌倉市で親子向けのものづくり・プログラミング教室を開いている「カマクラビットラボ」を訪れました。

 
会場のファブラボ鎌倉は、2011年日本初のファブラボとしてオープン。3Dプリンタやレーザーカッターなどを備え、ものづくりができる実験工房。ファブラボは、世界100か国、1600所にネットワークを持ち、毎年世界ファブラボ会議が開催されている

会場のファブラボ鎌倉は、2011年日本初のファブラボとしてオープン。3Dプリンタやレーザーカッターなどを備え、ものづくりができる実験工房。ファブラボは、世界100か国、1600所にネットワークを持ち、毎年世界ファブラボ会議が開催されている

プログラミングは「考える力をつけていくもの」

歴史の舞台として、関東有数の観光地として知られている鎌倉。鎌倉駅から歩いて5分ほどのところに、元酒蔵という趣のある建物に出会えます。ここに仕事のスキルや経験を活かし、男性が中心となって活動するカマクラビットラボの拠点があります。

カマクラビットラボは、鎌倉市内でパソコン教室を開いていたNPOのメンバーが集まって2018年春にスタートしました。現在、70代~30代の男性6名で運営しています。

「仕事でハードウェア、ソフトウェアを手掛けていたり、システム開発、WEB制作、ゲーム制作など得意分野の異なるメンバーがいることが私たちの強みです」と代表の山本修さん。

 プログラミングが小学生に必修になるニュースを耳にしてから、プログラミングの本意を子どもたちに伝えたいと、親子向け講座を立ち上げました。

 
エレクトロニクスメーカーをリタイア後、ファブラボ鎌倉に参加し、理事を務めるカマクラビットラボ代表の山本さん。子ども達に「やまもん」と呼ばれている

エレクトロニクスメーカーをリタイア後、ファブラボ鎌倉に参加し、理事を務めるカマクラビットラボ代表の山本さん。子ども達に「やまもん」と呼ばれている

「プログラミングは、一人でパソコンに向かって黙々とコードを書くと思われている方がとても多いのですが、プログラミングの本来の目的は、『自分で思ったことを実現させる』ことなのです。こう動いてほしいという命題に、いくつも仮説を立てて、一つひとつ仮説にトライし、何度も失敗を繰り返しながらゴールを目指していきます。創造力が必要です」(山本さん)

親子参加の講座としたのは、教室の後、子どもが家で復習する時に、覚えきれなかったところを保護者にフォローして欲しいためです。子どもは、復習して再現することで、学んだことが定着し、次の活動が前向きに、保護者もプログラミングの知識をより深めることができるそうです。

「私たちが伝えたいのは、技術や知識よりも『自分で作り上げた経験』です。子ども達がプログラミングから離れたとしても経験は残ります。子ども達が成長するにつれて直面する課題に、いろんな角度から解決方法を考え、解決の糸口を見つけようという意欲につながっていけたらと思います」(山本さん)

 
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カマクラビットラボの講座のカリキュラムは、全てオリジナルです。講座は「子どもがソフト、ハードの両方を学ぶことで、これから訪れる正解のない世界で生きていくための力をつけられるもの」、「自分たちが楽しいと思えるもの」をベースにメンバーで話し合って作り上げています。講座で使う材料も、ほぼ手作りです。

そして、団体を運営するにあたり、形態はLLP(有限責任事業組合)を選びました。理由として個人が代表の団体だと市の後援を取るのが難しいことや、ボランティア活動ではなく、少しでも利益が出ることも必要だと感じたためです。利益は、講座開発費用や備品購入などにあてています。

 

ソフトとハードの両方が学べる

一般的なプログラミング教室では、パソコン内のソフト操作をしてゲームなどを作成するまでですが、カマクラビットラボでは、ソフトとハードが学べます。

「生活の中で手にするもの、目にするものには、マイコン(機械を制御する電子部品)が入っているものがたくさんあります。それらは、形(ハード)があって成り立つものです。私たちの考えるプログラミングは、ソフトとハードどちらかひとつではなくて、両方あるものとだと考えています」(山本さん)

取材当日は、「大人も子どももはじめての、ものづくり・プログラミング」の全6回コースの最終日。「アクリル板に絵を描いて光らせよう」という講座でした。親子3組が参加し、前半は、動きのあるLEDを光らせるプログラミングを行い、後半は、アクリル板を立てる箱の組み立てと、事前に書いてきた絵を下書きにして、アクリル板を削る作業をしていました。子ども達が作業を行う時には近くにスタッフがつき、アドバイスをくれたり、作業を手伝ってくれます。アクリル板にかかれた絵が、プログラム通りに七色の虹色に光ると歓声があがりました。

 
カマクラビットラボで使われている「マイクロビット」は、これ1台で光、音、通信などが行える(写真内ケーブルにつながった機器)。イギリスのBBCがイギリス国内の教育機関に100万個を配布している

カマクラビットラボで使われている「マイクロビット」は、これ1台で光、音、通信などが行える(写真内ケーブルにつながった機器)。イギリスのBBCがイギリス国内の教育機関に100万個を配布している

講座は、前半にソフト、後半にハードが学べるようになっていて、カマクラビットラボの思いがぎゅっと詰め込まれていました。1回の講座にふたつのことを学べる内容に、子ども達は2時間集中して取り組んでいました。

 

同じ思いを持つ「同士」の集まり

 
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首に手ぬぐいをかけて、子ども達にアドバイスを行っていた秋山さん。システム開発やフリーでSEの仕事をしていました。
「ここでは僕はお笑い担当です(笑)。できる子よりもぼーっとしている子、好きなんですよ。分からないのは大歓迎。それは新しいことを学べるチャンスだから。分からないことはどんどん聞いてほしいですね。子ども達にやり方を教えると、オリジナルのやり方を生み出す子も出てきます。時々『お!』と思うようなことをする子もいて、毎回刺激をもらっています」

 
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広報担当の二藤部さんは、現役のWEB制作者です。
「山本さんや秋山さんを見ていると『いい年の取り方をしているな』と感じますね。WEBの仕事は一人でできてしまうことも多くて、このままでいいのかな?と悩んだことがあります。ここに参加してからは、メンバーからいろんな情報を聞いたり、子ども達のアイデアに唸ったりと、毎回発見があります」

 二藤部さんに年齢の異なるメンバーとの活動についてお聞きすると

「年齢差が気にならない位、みんな考え方がとても柔軟ですよね。豊かな経験の話からも学ぶことも多いのですが、最新の情報も常に知っていて、話していてとても楽しいです」

 それに対して山本さんからは

「私は、カマクラビットラボは『価値観が一緒の仲間と活動ができる団体』と思っています。メンバーは地域の子ども達にプログラミングを教えたい『同じ志を持つ同士』です。なので、年齢差はあまり気になりません。個人的には、年齢があがるとどうしても頭が固くなりがちなので、若い世代と話す機会や場があることはうれしいですね」

 

小学生低学年向けの講座を開催したい

 

親子向けのものづくり・プログラミング講座を終えた子が、応用講座や、講座会場と同じ建物内にあるファブラボの講座に進むことがじわじわと増えてきています。

 
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親子向け講座の他に、大船や葉山などで単発の講座開催や、平日の月・火曜日にアフタースクールの講座を開講し、学校帰りの小学生が通うようになりました。また、山本さんが開発した4足歩行ロボシリーズが総務省のプロジェクトに採用され、山口県、鳥取県の小学校で「ものづくり・プログラミング教室」の実施にもつながりました。

少しずつ活動が広がる中で、これからやってみたいことなどを山本さんにお聞きしました。

「小学生低学年向けの講座を開催したいですね。大学生のメンバーもぜひ入ってきて欲しいです。集客の難しさも感じていますが、引き続き市報への告知やネットでプログラミング教室検索ができるサイトに登録するなどして、開催情報を広めたいです。メンバーも随時募集中ですので、興味を持たれた方は、ぜひご連絡ください」


カマクラビットラボデータ

活動開始年 2018年4月

メンバー数 6名

活動場所 ファブラボ鎌倉(https://www.fablabkamakura.com/


カマクラビットラボWeb

https://bitlabo.org/


執筆:渚いろは/写真:森永陽子