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人生100年時代
若い世代が考える『場』とは
大正大学(東京都豊島区)
2019年10月15日、大正大学の「地域貢献論」の授業で、100歳まで働けるものづくりの職場『BABA labさいたま工房』について、1年生・2年生にお話してきました。
20代の学生が70代になるころ、生産年齢人口(15歳~65歳)と、高齢者人口(65歳以上)の数が、約イコールになると言われています。「死ぬまで働く時代」がやってくるのです。
とは言え、高齢になって体力や気力が落ちるなかで、満員電車にゆられて、週5日フルタイムという働き方は現実的ではありません。学生にとっては、まだまだ先の話ですが、確実にやってくる未来のために自分たちは今から何ができるのか、『BABA labさいたま工房』の事例を伝えながら、「シニアが活躍できる場ってなんだろう?」を考える授業を行いました。
まずは、『BABA labさいたま工房』についての感想から。
・アイデア次第で、高齢者の働き方は無限に広げることができると思った
・学生もただ、アルバイトしているだけでなく、多方面でつながりがあることを身近に感じながら働けたほうが、将来役に立つように思った
・年金に頼れない生活がくるのは怖いが、こんなところがあると希望がもてる
・ボランティアではなく、目的をもって仕事として活動できるのがすごい
・シニアの定年後の労働問題や、コミュニケーション不足などの課題にアプローチしているのがいい
・「点ではなく面でつながる」という言葉が印象に残った。つながりから新しい出会いが生まれていくのを感じた
・やりがいのある場所というのは、お金がもらえる場所と同じくらい価値があると思う
「人生100年時代」と聞いて、ポジティブに感じるか、ネガティブに感じるか、挙手をしてもらったところ、8割の学生が“ネガティブ”に手をあげました。
普段、シニアとふれ合う機会のない学生にとって、高齢者になることを不安に感じるのは、当たり前のこと。高齢者になった自分を想像するのは難しいかも知れませんが、『BABA labさいたま工房』で働くシニアの様子をみて、少しだけ未来を描くきっかけになったようでした。
学生がシニアと一緒につくる『場』についてのアイデアも出してもらいました。「わたしたちだったらこんなことができそう」「おばあちゃんに、こんなことをしてもらいたい」と、さまざまなアイデアが飛び出しました。
・おばあちゃんと交流して、色々と悩みごとを相談したい
・おばあちゃんの孫など、小さい子どもたちの遊び相手になる
・シニア向けの商品を一緒につくる
・一緒に料理をつくって提供する、郷土料理も面白そう
・地域のみんなの場として、シニア相談窓口があってもよいかも!学生も色々相談したい
・シニアの活躍を若者がSNSで発信する
そのほか、シニアのためにこんな『場』があったらいいなという意見もありました。
・限界集落や地方に『BABAlabさいたま工房』のような場があったらいい
・『じじらぼ』おじいちゃんが活躍できる場所があったらいい
・防災や防犯など、シニアの情報共有拠点があったらいい
・多世代で交流しながら暮らせる場所があったらいい
授業のフィードバックの中から、“自分のこれからの生き方”について、学生の言葉を紹介したいと思います。
・「楽しめる人がつよい」という言葉が印象に残った
・10年後、50年度それ以降をどのように生きるかを考える機会になった
・色々な人とのつながりを大切にしたいと思った
・今日の話を聞いて、自分でも仕事を作ってみたくなりました
・定年退職後、孤独にならぬように色々な活動に参加したいと思った
・同世代の若いひとたちと一緒に、起業してみたいと思った
「高齢化・少子化・人口減少」耳には入るけれど、自分にどう関係するのかは実感できない。そんな学生にとって、”高齢になっても楽しくはたらく”という実例は、彼らが地域で活動するためのヒントとして、きっかけとして十分刺激になったようです。
最後に、ひとりの女子学生の感想を紹介します。
祖母は、力も弱く行動も遅く、忙しい朝などはイラついたりしていた。
「年をとると“できないこと”が増える」という言葉にハッとした。
自分も年をとって、思いどおりに動けないときに、心ない態度をとられたら落ち込んでしまう。
相手の気持ちを考えて生活することが大切だと感じた。
この気持ちこそが、シニアと学生の交流においての大切な一歩ではないでしょうか。
歳をかさねると“できないこと”がふえるけれど、歳をかさねたからこそ“できること”がある。
執筆:桑原静(BABA lab代表)